密閉型の小型Newモデル DISK Eと自動給気補正モデルの検証と、講習会の話 1

1/22、23と二日間に渡りEDILKAMIN(輸入元 北越融雪株式会社さん)のNewモデルと換気・気密の講習会を当店にて行いました。

主催、輸入元の北越融雪・宮腰さんのFacebookから

https://www.facebook.com/youichi.miyakoshi/posts/2749816481773772

たいへん充実した講習会となりました。やりたかったことができた感あります。

以下、いくつかの換気や気密に関する用語が出てきますが、冗長になってしまうので一つ一つ説明をつけません。ググってわかる内容なのでお許しください。

今回の目的は、
EDILKAMINの、小型・密閉型(シールド)Newモデル「DISK E」を

  • 室内負圧条件下で、
  • エラーを出さずに、
  • 適正燃焼させるための
  • 理屈と設定方法を学ぶ、

というものでした。

いつものごとく、文章をまとめ始めると、ついつい長くなってしまうので、先に重要な結論を挙げておきます。

今回、私自身の目的は、

もうひとつのEDILKAMINのシールドストーブ「ANIA」の自動給気補正制御システム(レオナルドシステム)が、室内負圧を変動させた際にどのような追随、制御をするか確認すること

にありました。DISK Eよりそっち?

結果、ANIAでは、少々デフォルトの設定からパラメーターを変更することで、ばっちり適正なコントロールをすることが確認できました。この検証が数字の裏付けをもってできたことは重要な成果だと思います。

ANIA:自動給気補正 レオナルドシステム搭載
DISKE:非搭載 ※販売店による測定および設定

となっています。価格も倍くらい違います。

あと、もう一つ。

シールドストーブは三種換気の影響を受けないか、軽減するという解釈が私たちの業界に広がっています。自分もそう言ってきましたし、必ずしも間違いではありませんが、一年くらい前から各社の経験が共有されて雰囲気が変わってきています。シールド仕様であっても、よっぽどの密閉性がない限り、現在販売されている機種の密閉性では、相応の影響を受けてしまう、ということの確認が今回できたということ。シールドを選べば室内負圧による問題は生じない、ということはない、というもの。

それらについての実証と、どの程度の影響で、また対応できることなのか確認すること。

エビデンスを積んで!

これらが今回しっかりできたもので、私自身はたいへん満足で嬉しい機会となりました。

当店での講習会を企画していただいた北越融雪さんとご担当の宮腰さん、南雲さんに心より御礼申し上げます。

今回の講習会に先立ち、2019年10月3日にDISK Eテスト機にて、実証試験を実施済でした。
この時の内容を踏まえて、今後、DISK Eを販売されるであろうディーラーさんたちに声をかけて講習会をやりましょう、
となりまして。今回の開催に至ります。

https://www.facebook.com/renewable.small/posts/2419405555015285

と、いうわけで、既に私はDISKEで室内負圧を振ってみての燃焼設定については体験済だったので、給気補正自動制御機種で確認したかったわけです。

では、具体的な内容を。

前で述べたように、小型で価格を抑えているDISKEは、レオナルドシステムを搭載していません。ストーブの燃焼が室内負圧の影響を受けてしまう場合は、自動で調整されません。よって、炉内と室内の差圧を測定しながら、適正燃焼できるように、またエラーを出さないように調整しなければなりません。この調整をディーラー(販売店)が行うことになります。

今回の講習会の主目的は、この操作を室内外の気圧差を可変できる仕様の高気密住宅にて行い、マスターすること。でした。当店の自宅兼ショールームではそれができるので。プラス、高気密高断熱、換気の知識を実地で習得すること。

座学や資料だけでやっても、なかなか実感が伴いません。高気密住宅が増えてはいますし、最近の新築住宅は特段の気密工事をしなくてもそれなりの気密になっています。

住まいの気密性が確保され、3種換気が設計通り機能している際、室内と屋外の気圧差は、だいたい10~20Paくらいです。うちだと計画換気の設計値で換気量を設定すると20Paを越えます。

さらにレンジフードを弱中強の各段階のうち、強運転時は、50Paを超える場合があります。レンジフード同時給排の機種であってもこのくらいになります。「同時給排なので大丈夫!」というのは誤解です。実測すればわかります。

C値が1を下回り、0.5以下くらいになってくると、ストーブをしっかり調整しなければなりません。うちの場合は0.1なので、はっきり影響が確認できます。

2以上くらいだと、レンジフード強くしても家の隙間からの漏気で補填されるのであまり影響なさそうです。経験上。ストーブを燃やすには楽ですが。
C値で0.5以下くらいを当たり前にしていかなくては、と思います。

ペレットストーブには「負圧センサー」という安全装置が搭載されています(非搭載のメーカーもありますが、私は必須の装置だと考えています)。適正な燃焼ができないと、このセンサーが働き、エラーを返してくるため、ストーブが運転を止めて消火に移行してしまいます。 フェイルセーフの機構なのです。 室内に炉から排気が引っ張られるような燃え方になるとこのセンサーが働きます。一酸化炭素中毒を防ぐためにもたいへん重要なセンサーです。

三種換気の住宅では、常時24時間換気の換気扇が回っていますので、室内が負圧になっています。当店の負圧値は上で記したとおりです。

ストーブは排気を外に吐こうとしています。換気システムも外に吐こうとして動くので、引っ張り合いが起こります。
それで負圧センサーがエラーとなってしまうのです。

こんな感じで付いています(写真は別のメーカーのもの)。

ほとんどのセンサーは、ダイヤフラム式といって、ゴムの円盤をケーシングしただけのシンプルな機構です。差圧をみていまして、設定のPaを超えると、ゴムが「ペコン」と逆サイドに動き、導通のONとOFFをします。差圧ですから2箇所の空気圧の差を計っています。一方が炉内、もう一方が室内(空間)につながっていて、24時間換気で室内側に強く引っ張られた時は、スイッチが入りエラーになってしまいます。この際、排気ファンの回転数を上げると引っ張り返せます。つまりスイッチがOFFになりエラーが出ません。

参考動画がこちら(これは別のメーカーでセンサーエラーが起こったので確認しているものです)。

これをうまく調整して、引っ張り合いに負けないように適切に設定するのがディーラーの仕事でもあります。住まいの仕様を見て、どのくらいの室内負圧になるか見極めるのも。勘に頼ったり、エイヤーでやっている人が多数ではないでしょうか。

うまく調整したつもりでも、いきなり大きく室内負圧が変動してエラーが出る場合があります。それがレンジフードに強く引っ張られた時なのですね(他にも起こるケースはありますがここでは触れません)。

自動制御の給気補正が正常に機能すれば、逐次の室内負圧の変動に追随して給気量を増減させるので、最適燃焼が維持されるはずです。さて実際にそうした条件下で稼働させた際にどうなるか?確認したくなりませんか?

自動であっても手動でも、換気システムやレンジフードに空気が引っ張られた場合は、ストーブの排気ファンを強く回して引っ張り返す。応分をキャンセルする、というフィードバックをすることになります。(手動の場合はエラーを回避できる程度に回転数設定を上げる)

あまりに調整幅が大きくなってしまう場合は、空気(酸素)過剰で過燃焼になってしまうので、室内負圧が拡大しないような別の策も取らなければなりません。例えば、日本住環境さんの差圧給気式「パスカルダンパー」などを追加するなど。

あまり室内の給気を変えてしまうと、設計されていたはずの、ダーティーゾーンを経て排気していく計画換気を崩してしまいます。ひとつの部屋の換気量が増える一方、以前はきちんと計画換気が機能していた別の部屋の換気量が確保されなくなるなどの問題が生じる可能性があります。設計がきちんとしていれば、給排量のバランスが取れています。

レンジフード稼働時にはこのバランスが崩れますが、短時間なので一日でみればたいした影響ではないでしょう。

ストーブの燃焼だけをクリアすればよいわけではないのでストーブ屋は注意されたし。

こうした状況を踏まえまして、計画換気への影響は最小限で、負圧が高まるその時だけ調整する差圧給気ダンパーをお勧めします。

エラーが出なければよいというわけではないのです。大事なのは条件に合わせて適正な燃焼ができるセッティングができること、です。

講習ではこの辺りのことを、各換気機器のスペックのデータをお見せしながら説明するのですが、基礎的な知識がないとついて来れなくなってしまいます。頭が混乱し、より重要な説明時や実習時にも混乱が続いてしまいます。講習参加者にはプロとしての自覚を持って、少なくとも換気・気密の関連本や住環境とエネルギー消費についての一般的な本くらいは何冊か読んで、それから受講いただくようお伝えしています。こちらでリストにしています

講習では換気・気密の学習が主ではないです。よりしっかりとやるべきことは他にあります。(混乱するのがわかっているので、座学の前に実習を組むようにしてます。アイスブレーキングですね)

DISKEでは、室内負圧や給気ダクトの圧力損失で影響受けた分をキャンセルできる程度に排気ファンの回転数をアップさせます。Realな回転数ではなく、段階を上げる内容になってます。ちょっとわかりにくい。

燃やして動かしながら差圧計とにらめっこ。確認しながら調整します。

あれ?

過去の自分のブログを読み返してみると、重要なことを意外と記事化していませんでした。

上記の調整作業は、PIAZZETTAの講習会で毎度やってきたこととほぼ同じです。何度も開催したPIAZZETTA講習の内容をブログに上げてなかったとは。

それで。

やってることは一見そっくりなんだけど、比べてみるとメーカーの考え方や背景の違いが垣間見えて面白いです。

DISKEでは、特に低出力で運転している際の調整が重視されています。弱く燃やしている時は排気ファンの回転数が低めなので、その時にレンジフードがブンブン回ってしまうと引っ張りに負けてエラーが出やすくなってしまうからでしょう。

要するに、室内負圧への対策としての観点が重視されています。

PIAZZETTAの場合は、最大燃焼で炉内および排気筒の温度を十分に上げてから各出力段階で個別に設定するよう指示されています。排気筒の温度が上がるとドラフトが強くなり、排気が促進されます。

「室内負圧の影響に対処するため」ではなく、「各出力における適正な燃焼」を実現するために排気ファンの回転数を増減して炉内圧を適正な範囲に維持する、というのがこの調整の目的なのですね。

この調整が、室内負圧に対処する際にも似たことをするのであって、エラーに対処するのが主眼ではないのですね。PIAZZETTAの場合は。

このように、各社の仕様を比較してみると面白いんです。

ちなみに、私のPIAZZETTAの調整では、4~5段階ある出力のうち、高出力側はあまりいじりません。低出力側、特に最小出力のところをしっかりいじります。

その理由は。講習会ではパワポで図解しましたが。長くなるので別の機会にします。

ひとつ、備忘として。

運転を開始してしばらく経ち、炉内温度、排気温度、排気筒内の温度が上がってくると、炉内圧は複雑な変動を示します。

排気筒(煙突)のドラフトが強ければ、強く引っ張られるのでPaの絶対値は上がります。

一方、PV=P’V’ 、PV=nRT に則り、温度上昇で気体の体積が増えるので、炉内の容積は変わりようがないですから、圧力が上がります。これは排気の抵抗となるすようで、Paの絶対値を下げます。

方や上げ、方や下げ。これらが相殺しあって排気圧が決まっています。あの案件はああだった、この案件ではこうだ、条件の違いは云々、と興味深いところです。経験でもそれなりに状況は掴めるかとは思いますが、正確に理解するには、やはり各条件での実測とそれに基づく適切な設定が不可欠でしょう。

煙突については、ドラフトのシミュレーションを過去のブログでしており、また、さいかい産業さんにて実験中なので具体的な報告をお待ちください。そう遠くない先にできるかな?

それでANIAのレオナルドシステムのことですが。

つづきます

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