ペレットストーブによる温熱環境変化

ここのところ、室温データの解析にハマり始めています。厳寒期に開始したかった。とりあえずの紹介です。

最近の自宅兼ショールームの室温データのグラフです。現時点ではまだ十分な解析ができるようなデータは取れていないのですが。初っ端から言い訳がましい。。。まあ読み進めてください。

凡例
state1:ピンク線 1F(ストーブ近く。FLより1.5m)
state2:水色線  2F(正確には中二階。スキップフロア)

測定器:T&D おんどとりease
作図:T&D Graph

ストーブ:PIAZZETTA P955 ※22℃自動温調(エナジーセービング)
ペレット:イクイの松ペレット

屋内の室温推移。毎日のログです。1階と2階にて各1箇所に「おんどとりease」を置き、毎日データをパソコンに吸い上げています。
10分おきに記録しているので、一日の間の温度変化がわかります。特にペレットストーブを使った場合とエアコンの場合でどのように異なるかがグラフに表れています。

今シーズンは吹き抜けの開口面積を変えたり、あれこれと試しました。
その様子はFacebookの投稿に動画でアップしてありますのでご参照ください。お香を焚いて煙の動きで室内の空気の流れをチェックしたものです。
温かい1Fの空気は、容易に吹き抜けを上がっていくかと思いきや、そうはならないという意外な動画もあります。その解説は、長くなるので。また今度。

グラフをみると、我が家の生活パターンがわかってしまいますね。
室温のログを眺めて。ストーブに火を入れたくなる温度があるなぁと気づきました。

自宅の場合、19.5℃を下回ると暖房を入れたくなるようです。
18℃を下回ると躊躇なくストーブをONしているようです。
18~20℃くらいだと、ストーブではオーバーヒートしがちなのでエアコンでいいかな、という考えになるようです。

最も快適さを感じる冬場の室温は、うちの場合はどうやら22~23℃のようです。それ以上だとオーバーヒート感。

ストーブだと温度変化のピークが鋭く立ち上がります。1Fと2Fで昇温に開きがあります。これは出力だけでなく間取りの影響も大きいです。

エアコンだとゆるいですが上下階の温度差があまり開きません。設置位置が重要です。 うちの場合はエアコンだと暖気が上階に上がりやすい位置に設置されています。

夕方の室温上昇の推移をみると、水色線がピンク線を上回りながら上昇している日が2日あるのが見つけられるはずです。これ、エアコン暖房の日です。2階の方が先に温まる。

コールドドラフトを感じる温度差もわかりそうな感じです(1Fと2Fの温度差が開くとコールドドラフトが始まる)。

エアコンの場合は、”止めない運転”をしないと快適にならなそうな印象です。冷えた状態から昇温する使い方ではなく、冷まさない使い方、室温を常時維持する24時間暖房として使う。
そのあたりのデータ収集と解析は来シーズンの宿題とします。

今回のデータには含まれていないことですが、
厳寒期にストーブを何種類か、位置も変えて試してみました。 同じ位置に置いたストーブであっても、温風吹き出しの位置や方式(温風なのか輻射・蓄熱なのか)によっても、家全体での感じ方がずいぶん異なることを確認しました。その時点では残念ながらログが取れていないのでメモした計測値のみ。

実は、その結果がとても面白かったのでデータを取らなければ、という気分になりました。冷気は層流になりやすい印象がある反面、暖気はいったん室内で拡散してしまうと思ったより上昇しない。上昇する場合も層流にはならず、上方の空気を押し出して循環させるほどの働き者ではない。これが現時点での観察結果でして、それをログやサーモカメラも使いながら検証していきたいところです。
快適さには壁の温度や、温度分布も大きく影響するので。

さて、この後は昔の話を交えまして。関連する内容を。

2000年ごろでしたか、宿谷昌則先生(当時の武蔵工業大学教授。現、東京都市大学)が、環境・建築とエクセルギーのテーマでお話しされた会を聴講しました。物理学会に環境物理の部会が立ち上がる頃、学会有志の勉強会にお邪魔してお聞きしたのが最初。その後、自分が運営委員をしていた市民団体の勉強会の講師を依頼し、それからしばらくお付き合いいただく機会を得ました。研究室にもお邪魔したのを思い出します。

講演の際、

人体のエクセルギー消費と室温・壁の温度の相関

に関する紹介がありました。両軸に室温と壁の温度を取りまして、人体のエクセルギー消費量をプロットした図です。

これは貴重な知見でした。室温にとらわれていました。(ここで「エクセルギー」としていますが、この場合は単に「エネルギー」と捉えても差し支えありません)

これは現在では

『エコハウスのウソ』(日経BP社)の中で前真之先生が

「PPD(不満者の割合)と着衣量」の相関や

「快適な空気温度・放射温度の組み合わせと放熱ルート」で示している内容と同じと考えて差し支えないでしょう。
詳しくは前掲書を、宿谷先生がお話しされた内容は『エクセルギーと環境の理論』をご参照ください。

上記の内容ですが、単純にいえば、

室温が大事ではない、とは言わないけど、壁の温度や均一さが快適さにすごく効くからね、

という意味と理解してよいかと思います。

室温を、気持ち低め、
壁の温度を、気持ち高め、
に維持する
のが快適さにつながるようです。

単純に例示しますと、
寒~い日に湯船に入らずにシャワーだけで済まさなければならないこと、ありますよね?この場合、シャワーだけだと堪えます。 体は温まったのにすぐに冷えていく感じ。
しかし、冷え切ったシャワールームであっても、初めに冷えた壁に熱~いお湯のシャワーをあててある程度温めておくと、
寒くない!
やったことあります?
そうしておくと、お湯の温度は普通か低めでもOK。ヒートショックとも関連する話です。

室温は、すなわち室内の空気の温度です。壁の温度は放射(輻射)で人に熱を伝えます。
(厳密には、気体も放射しますが対流のみの伝熱と理解して差し支えありません)
快適さに、思っていた以上に輻射が効いている。

宿谷先生の紹介の頃は、PPDの結果は周知されていなかったのですが、「人体のエクセルギー消費」の方が(文献としては古いもののの)定量的です。快適な環境にて人体が消費するエネルギーは少なくなるという測定値ですから。エネルギー消費が少ないとストレスを感じなくなるようです

高断熱高気密住宅の24時間全館冷暖房が寒冷地以外でも普及しはじめています。保持されるのは室温だけでなく、壁および屋内の色々な蓄熱体としても機能してしまう家具類、壁内の断熱材の温度も24時間保持することとなり、それが変動や不均一を抑え、快適さにつながるということのなのでしょう。
来シーズンはそれを自宅兼ショールームで実測したいと思います。うちのビルダーさんは床暖か24時間エアコン推奨で、断熱材はFPの圧縮ウレタンパネル、C値は0.1の高気密高断熱なので、実証には最適のつくりです。高気密に適したシールドストーブのうち、低出力モデルでも試してみたいところです。

関東では暖房は間欠で入れるやり方が当面は続くように思います(先のことはわかりませんが)。そのためには短時間に中~高出力で室温・壁を温めつつ、いったん温まった後は低出力で保持する。そうした暖房方式が適しているように思います。
短時間で温めるには、その対として、低温の空気も移動してしまう。すなわちコールドドラフトを招くことがあるので、それが主たる位置(リビングやダイニングの居室で、過ごす位置)に落ちてこない間取りや暖房方式の工夫が要ります。

これからはペレットストーブを採用した場合の温熱環境の最適化に取り組んでいきたいと考えています。最適を目指したくても、実際には間取りの制約があるので、「この位置につけられませんか?」という条件で設置になることが今と同様多いことでしょう。その場合でも最も効果的なご提案が今以上に、根拠をもって、できるように!

ご新築でペレットストーブ導入を検討される方は、間取り決定前やビルダーさん選びを始める段階で一度ご相談ください。

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