長期保証をバスタブで考える

ペレットストーブを当方にてお買い求めいただいたお客様には、長期保証をご案内しています。

ペレットストーブは機械ものですので、たいていのメーカーは保証期間を一年としています。まれに数年、部位によっては4年間などのケースもありますが、一般的には一年間です。家電製品もだいたい一年ですね。

本体、設置工事諸々で総額ウン十万円の決して安いとは言えないお買い物です。一年間のみの無償の保証期間ではユーザーの立場からは不安を感じてしまうと思います。

そこで当方では長く安心してお使いいただくために長期保証を設けています。適用条件としては、毎年メンテナンスを受けていただく場合に限り、追加費用はなしで、自動的に設置より5年間の保証対象とさせていただいております(※2020年1月以降の販売分より一部メーカーの無償保証期間を3年間に短縮しました。詳しくはお問合せください)。
過失や消耗部位により保証できない場合もありますが、機械系の部位の故障は概ね保証対象としています。

保証期間中にファンが故障して交換などの作業が発生すれば、当方の持ち出しとなります。
「販売時にずいぶん儲けているんじゃないの?」 (;´∀`)汗

これを単純な持ち出しだとは考えていません。よく考えた上でのサービスにしているつもりです。その理由は???

ヒントは“バスタブ”。バスタブで長期保証を考えるんです。(知ってる方にとっては以下は常識的な話で恐縮です)

当方がどのような考え方で事業を行っているかご案内するちょうどよいネタでもありますので、少し長くなりますが、お付き合いください。

私は92年にメーカーの技術者として初めての職に就きました。幸い新入社員研修が充実していたので、メーカーに勤める者としての常識をそこで学びました。最初の頃に出てきたのが、故障の3類型でした。

その1 初期不良(故障)

その2 偶発故障

その3 製品/部品寿命(摩耗)

発生率は一般に 1>3>2 となります。(3は、いずれは100%)

例えばWikipediaではこのように図入りで紹介されています。
この推移が、バスタブに似た形になることから、“バスタブ曲線”と呼ばれることがあります。正確には“故障率曲線”です。

1の、初期不良はNewモデルの発売後に起こりがちです。どうしても耐久試験やその条件設定が実際の多様な使われ方を反映しきれていない場合があります。メーカー保証期間内ですから、何かトラブルがあればメーカー負担です。

2を、飛ばして3。これはもう、使用を経ての劣化ですから、お客様にご負担いただくものになります。部品により耐用年数がいろいろです。都度の交換、修理になります。無償の保証対象にはなりません。当方ではこれは5年間の使用よりも後になる、と想定しています。

それで、よく考えるべきは 2 の、偶発故障期間の対応です。

この期間にもし故障が発生すれば、メーカーの保証期間を外れてしまっているので、ユーザーとしては「安い買い物ではないのに、なんだかなぁ」という気持ちになってしまうと思います。

この期間に起こる故障は、大別すると2種類。
発生頻度が著しく低い“たまたま”の故障と、
一年間の使用では生じないが設計に由来する(時に使用条件がメーカーの想定よりも厳しかったり、ラフであることにより起こる)故障です。

後者の故障は、頻発するようであれば、これは統計的にはっきりします。一年間を過ぎていたとしても、類型としては”初期不良”に相当すると理解するのが普通です。一年間では露呈しなかっただけです。この場合の故障対応は、原則、メーカーが負うべきと私は考えていますし、そういうケースがあればメーカーにその旨、要望します。メーカーは、積極的・誠実に合理的な判断を下すはず、と期待できます。

これが、金額にして数万円程度の商品で、買い替え需要・消耗性のある機器だったら、メーカー無償保証が一年間でも仕方ないかな、と思います。しかし、ペレットストーブの場合は、一生もの、少なくとも10~20年の使用を念頭においてご購入いただくわけです。なのに一年間しか無償保証が付いていなければ心許ないでしょう。

偶発故障のうち軽微なものであればあまり気にしなくてもよいかも知れませんが、なにせ火を屋内で燃やすという機器ですので、より安全側になるように判断していくことが求められます。もしこの期間に起きた故障が一見そうとはわからなくても実は深刻なものだった場合、対応は必須です。お客様が費用の負担に躊躇しなくても済むよう、無償で対応する意味は安全側に導くためにも十分にあると考えています。

“たまたま”の偶発故障は、数にすればわずかですから、それらの対応費用程度は当方の持ち出しだって構わないのです。

そういう理由です。

メンテナンスが不十分だとストーブは故障しやすくなります。
特に排気系路の詰まり。これは最悪は火災に至る重大なトラブルにつながる可能性があり、他の箇所へも不具合を拡げる可能性もあるので、必ず毎年メンテナンスしていただかなくてはなりません。

私たちプロが見れば使われ方の状態はおよそわかります。また入念にやるべきところと、ざっくりでもよいところの割り切り方も。

毎年チェックできていれば、当方のような販売・代理店の単純な持ち出しによる故障・トラブル対応は減らせるはずなのです。

そこで、できるだけ毎年チェックさせていただくためにも長期保証をお約束し、有償メンテナンスをご案内しています。

毎年のお客様の負担額を節約するために、ユーザーができることはやっていただき、重要なところだけお任せいただくコースも設けています(その方がストーブに対する理解や愛着が深まるのでお勧めです)。どちらでも長期保証の対象とさせていただいておりますのでご安心ください。(追記:簡易メンテナンスのコースは廃止いたしました)

以上、バスタブにつかりながら考えた?わけではありません。

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